あけましておめでとうございます。
「六番目の小夜子」4回目の再放送を祝しまして、
「六番目の小夜子」再放送記念企画ってのに参加している割には貢献しておりませんので(笑)昨年の1月に
「サヨコたちの同窓会」という掲示板に短期連載しました外伝を再掲載してみようと思います。
「六番目の小夜子」外伝
『忘れないから…』その1花宮雅子から携帯にメールがあったのは、年も押し詰まった一二月、ある寒い日の夕方だった。
「あのクラス」での同窓会があるという。
「あのクラス」
私が、初めて人との「触れ合い」と言うものを感じたクラス。
千葉の片隅の小さな中学。
そこで暮らした半年余りの体験は、私にとって何物にも代え難く、未だに心の奥底深く、居座っている。
冒険~友情~友との別れ
そんな通り一遍な言い方では説明出来ない、私の少女時代を代表する甘酸っぱい思い出達。
私は、雅子の携帯に出席する旨メールを入れた。
明けてお正月。
元旦の午後。
駅に降り立つと、待合室で雅子が待っていてくれた。
「ごめん、待った?」
「ううん!久しぶりねぇ。元気だった?」
駅前を通り過ぎ、裏通りを左に折れる。
この・・曲がり角は・・そうだ。
この曲がり角。
彼女と別れる時、互いに抱き合って泣いてしまった場所だ。
今は新しい自販機がひしめき合う、雑多な通りの一つになってしまった。
時の流れが如何に早いものなのか・・。
それを思い知るのはこれから・・もうすぐだ。
彼女って?
・・・誰だっけ?
(ワスレナイカラ!)
ハッとして辺りを見回す。
誰か・・私を呼んだ?
「この店よ!」
雅子が、ガラリと古い蕎麦屋の戸を開けた。
一瞬の沈黙・・・そしてささやき・・。
「津村!?」
「津村さん?!」
「津村じゃないかぁ!」
徐々に沸き立つ歓声と拍手。
遅れて来た者の特権。
「沙世子!こっちこっち!」
雅子が手を振って席を示してくれる。
互いに新年の挨拶を交わし合い、店の奥座敷の一角に滑り込む。
居心地の良さそうな炬燵に鍋が置かれ、暖かそうな湯気が立ち上っていた。
そして、あの時まだ「男子生徒」だった男性陣。
関根秋
溝口和彦
加藤彰彦
みんな赤い顔を揃えて、御神酒をいただいている。
「よぉ・・久しぶり・・」
「何年ぶりよ、あんた!連絡もしないで。たまには電話でもしなさいよ!」
「久しぶり、沙世子。寒かっただろ?」
遠慮のない物言い。
同じ時を共有した者同士の、何とも言えぬ・・ほんのりとした暖かい感情が滲み出てくる。
時が過ぎた気なんか全然しない・・。
「もぉ・・急過ぎよ!お正月の元旦から同窓会なんて!」
「だってカトんちの休みって今日しかないんですもの!無理言ってお店開けてもらうの大変だったんだから。」
「おまえなあ!、親父に頭下げて頼んだの俺だぞ!おかげで今日の料理まで全部作らされて・・。」
「良いじゃない、おかげで会費がずいぶん浮いたわ。」
幹事の溝口君の言葉遣いもあの頃のまま・・の筈。
雅子からビールをついでもらい喉を潤すと元担任の黒川先生の席に挨拶に行く。
「先生、あけましておめでとうございます。ご無沙汰致しております。」
「おぉ!津村ぁ!ますます綺麗になったなぁ。今どこに?」
「都内に住んでます。」
「そうかそうか。ゆりえさんのところには今でも?」
「ええ、機会があれば、今でも時々。」
「水くさいな。俺のところにも少しは顔出せ。」
黒川先生、少し白髪が増えたかな?
「さぁさぁ、先生。私達にも沙世子を貸して!話すことがいぃぃっぱいあるんだから!」
先生と談笑していると、雅子が呼びに来てくれた。
女性陣に囲まれてのおしゃべり。
互いの近況。
来れなかった友人達の話。
当時の思い出話、うわさ話。
他愛のない話題なのにいつの間にか、本当にあっという間に時間が過ぎる。
(つづく)
[0回]
PR
COMMENT
無題
恩田陸&六小夜好きなMsiです。
六小夜は、昨年DVDまで買ってしまったのですが、そのせいで今回の再放送は視聴せず。
そのため放送時、こちらのブログ等で盛りあがりをみせていたのを知ったのも
数日前のコトでした(ToT)
小説読ませていただきましたが、
沙世子ではなく玲の方が「学校にすみついている存在」という設定は新鮮でした。
(はぁぁ、なるほど~)と。
ちょっと物悲しくもあり心あたたまるいいお話ですねぇ。
六小夜関連でTBさせていただきました。
無題
ようこそはじめましてm(__)m
拙い外伝ですが、読んで頂きありがとうございます。
六小夜fanが増えるっては本当に嬉しいもんです\(^O^)/
>沙世子ではなく玲の方が「学校にすみついている存在」という設定は新鮮でした。
これは某六小夜fanサイトの管理人様の考察なんです。
仮説・考察「もしも」って世界がこんなに身近に存在するとは…本当に新鮮な経験でした。
私も2001年の再放送時にfanになってDVDを購入して以来ですからもう4年になりますが、未だにあれより面白いTVドラマに巡り会ってません。